The finale of Finale

日記

Finaleの開発/サポートと終了が発表されました。
https://www.mi7.co.jp/products/finale/

ご存じの通り、業界全体が大騒ぎなのですが、本件に関して思ったことや、各所で話ししたことなどを改めて書き連ねてみたいと思います。

懸念は過去のファイル

皆さんが指摘しているとおり、最大の懸念は過去に作成したファイルが開けなくなることです。MakeMusic側も当初の方針を変更して、ライセンス認証の無期限化を決めはしましたが、基本は現状動くコンピューターのみ。恐らく、10年後くらいには、OSベースでAIが搭載されるようになり、その頃にはFinaleは動かなくなるでしょう。つまり、マシンやOSの入れ替えとともに、Finaleの灯火は、文字通りmorendo または perdendosi(次第に消えるように)のごとく消えていくわけです
現時点での解決法は、.mus/.musxファイルを、Finaleが動くうちにPDFならびにMusicXML化しておくことです。それでも、浄書的な微調整の情報は失われてしまうわけですが。
そして、.mus/.musxファイルをXML化するサードパーティー製のソフトなどが出てこないものかとちょっと期待してもいます(笑)。InDesignでQuarkXPressのファイルが開けたように、Doricoで.mus/.musxが直接開けるような未来があれば、それも素晴らしいと思います!

終焉は時間の問題だった

私はプログラミングについては素人ですが、それでもFinaleが旧態依然としたプログラムであったことは容易に想像がつきました。
Finaleが開発された1989年は、ゲームでいえばファミコンの『ドラゴンクエストⅢ』の時代。ソフトのROMは256KBだったそうです(iPhone写真の4分の1くらい!)。プログラムの根幹部分の発想がその時代なのですから、逆に、2020年代のコンピュータで動いていることが驚くべきことともいえます。近年のバージョンアップ方針を見ても、Finaleがプログラムの根本的な書き直しをする気がないことは明らかでした。
都市インフラを見ても、地下鉄銀座線や丸ノ内線の天井が低かったり、都市開発が早くに進んだ地域では雨水汚水の合流式下水道がそのまま残っているように、「先行開発されたもの」は、ときに時代に合わせることに困難が生じます。それが、パソコンソフトであっても同じであることは十分理解に足ります。
その点において、Finaleはいつか終わりを迎えるとうっすらと予期していました。ただ、そのタイミングは思ったより早く、そして突然でした。

新しいソフトへの期待

様々な情報などを鑑みても、私はDoricoに移行することになりそうです。新たなソフトを覚えるのは大変なのですが、Finaleに比べて現代に合わせた合理的な作りになっていることは間違いなく、ひとたび慣れれば効率が上がるだろうという期待もあります。
喩えれば、「新たな楽器」を練習するようなものになりましょう。木管楽器から金管楽器に持ち替えたとしても、木管の経験がまったく活きないことはないように、楽譜製作や浄書の根幹部分を理解していれば、使っているうちに何とかなるだろうとは思っています。当分の間、能率は落ちてしまいそうですが、逆転するのも時間の問題な気がします。

バトンは次世代へ

時代のタイミングに恵まれたこともあって、Finaleにおいては、ある程度のオピニオンリーダー的な役割を担っていたという自覚はあります。共著の『Finale User’s Bible』は多くの方に手に取っていただきました。ヤマハミュージックアベニューのFinale講座は24年間務めています。吹奏楽出版譜のフォーマット策定に際しても、私の意見を一定程度取り入れていただいたものが、今なおスタンダードになっています。その前段階として、日本語版マニュアル校正に際して、英語版と日本語版との全ページを比較対象して赤入れをしたということもありました(今からそれはさすがにできない)。
今回の件に際して、皆さまから意見などを求められていますし、私もできるだけそれに応えられるようにしていきたいと思います。
他方で、Doricoに関しては、すでに様々な研究・実践を行っている方々が、若い世代を中心に多くいます。私自身も「ベテラン」と呼ばれるにはまだ早いと思いますが(笑)、それでも、前世代のソフトの実績を笠に、新たなソフトでも分かった顔をするのは老害ムーブそのものです。その点では、すでに次世代に引っ張っていってもらいたいと期待しています。そこに、私が培ってきた浄書面での知識や経験などを、必要に応じて提供していきたいです。

そんなわけで、しばらくは業界全体がバタバタしそうですが、この難局を乗り切るべく、協力しながらかんばっていきましょう!

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