三宅香帆『考察する若者たち』

日記

私は、「令和の若者」と接することが比較的多い立場にあります。ここしばらく、接する人数や時間のどちらにおいても、同世代より若者たちと向き合う圧倒的に多い生活を送ってきています。

「令和の若者」という括り(ステレオタイプ化)には多少の抵抗を覚えつつも、自分との若者との感覚面でのズレを認識したいという欲求、そして何より三宅香帆さんなら、単なる若者批判に終始することなく、堅実かつ誠実に論じてくれるだろうという信頼から、発売後すぐに手に取りました。

果たして、「報われ」という視座を軸に、メディアの変化や現代思想まで幅広く触れながら時代を映しだしていく三宅さんの筆致は、その期待を軽々と越えるものでした。年間365冊という圧倒的な読書量に基づく知見を散りばめながら、最終的に一つの軸へと収斂させていく手腕には、ただただ唸らされるばかりです。

本書では、「考察」(作者の意図を当てるゲーム)と対比させる形で、「批評」(正解のない解釈)が扱われています。読み進めるうちに、私自身が「正解を求める」気質の強い人間であることを改めて自覚させられました。
その上で、「同じものを見ていても、あなたの解釈と私の解釈は違う。だからこそ面白いのだ」という言葉に、背中を押されたような気持ちになりました。私は編曲家としても指揮者(指導者)としても、「解釈」からは逃れられない立場にあります。「批評的姿勢が問いを、そして自分自身の固有性を教えてくれる」という主張には、大きく勇気づけられる思いでした。

前著『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』(本書の姉妹書といえそう)でもそうでしたが、テーマを通じて普遍的な思想にまで思いを至らせる三宅香帆さんの筆力に、今回も圧倒された読書体験となりました。

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