『アッキーにくらくらセレクション 』

日記

加藤明久著『アッキーにくらくらセレクション』音楽之友社

『バンドジャーナル 』読者はおなじみだった加藤明久さんの長期連載コラム。1993年に掲載が始まった当時は、私が中学校1年生でした。中2の秋頃からか、職員室の顧問の先生の机上にあったBJ誌のバックナンバーを1冊ずつ借りては読んでいて、このコラムの端緒となった「自由な」ワンポイントレッスンも記憶に残っています。

インターネットが一般的ではなかった、あるいは動画なぞ夢のまた夢だったナローバンドの時代、普通の吹奏楽部員が触れられた音楽メディアは限られており、そのなかでもNHK教育テレビ『N響アワー』はとても貴重な存在でした。BJ誌で「テレビの中の人」の文章を読んで、ブラウン管の裏側の世界に想像を巡らせていた、いわば、学校やお茶の間と楽壇とを繋げてくれていたのが、この連載でした。

その30年にも亘るコラムをひとまとめにした本書、著者の軽快な筆致もあって、一気に読み切ってしまいました(笑)。大半のエピソードの内容が(濃淡はあれど)意外なほどに読んだ記憶が残っていました。他方で、文体や話題などから時代の空気感も感じられたり、あるいは自分自身が経験を重ねたことで、当時とは違った受け止め方があったりと、事前の想像以上に充実した読書体験となりました。

それも、31年という長期連載が1冊に詰まっているからこそ。連載の各コラムも、本書がなければ再び読み返すことはなかったでしょう。また、巧みな配列も本書の魅力を増しています。

もちろん、若い読者が今から読んでもとても楽しめるでしょう! 幅広い角度からプロ奏者の視点に触れられる(しかも読みやすい)貴重な1冊です!

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